前屈して床に指がつかない、しゃがめない、長座で座れない・・・など子どもなら誰でもできると思われていた基礎的な動きのできない子が増えています。生活スタイルや環境の変化、生活の利便化などによって、外遊びや運動、多様な体の動作が減り、身体の柔軟性と筋力が失われていることによって、子どものケガやスポーツ障害が増えています。この30年で中学生の骨折率は約3倍に増えていることが分かっています(日本スポーツ振興センター調べ)。
★体の動きチェック★
以下の動きのうち、1つでもできないと、スポーツや運動をしている時に怪我をするリスクが高くなります。体に痛みがある、日常生活に支障が出るほど動きが悪いという場合は、整形外科を受診されることをおすすめします。
- 1. 両脚を揃えて立ち、床にかかとを付けたまましゃがめますか?
- 2. 前屈して、床に指が届きますか?
- 3. 片足で10秒以上立っていられますか?
- 4. うつ伏せに寝て、片脚を曲げ、かかとがお尻につきますか?
- 5. 肘を伸ばしたまま、両腕を真上まで上げられますか?
シナジリティトレーニングは、本来子供が持っている体の柔軟性を引き出し、正しい姿勢を維持し、基礎的な運動機能をアップするプログラムを指導しています。ジュニア期のうちに姿勢を整え、体を柔らかくして自由に動かせる状態にし、基礎運動能力を高めて、大好きなスポーツや遊びを楽しく、安全に、長く続けられるような体づくりをサポートしています。
スポーツで起きやすい子供の怪我
(鳴門教育大学 南隆尚准教授)
オスグッド病
走る・蹴る・跳ぶなどの動作は、足腰の筋肉をたくさん使っています。スポーツや運動などでこれらの動作を繰り返し行うことによって、お皿の骨が腿の筋肉に引っ張られて骨が飛び出してしまう「オスグッド=シュラッター病」は成長期の子供によくみられる障害です。強い痛みが出るため、重症の場合には手術で骨を削る必要があります。練習の長期離脱を余儀なくされたり、競技を辞めてしまうきっかけにもなる怪我です。成長期で背が伸び、骨の形が変わっていく時期には、練習で大きな負荷をかけすぎず、下肢のストレッチをしっかり行って筋肉の張りを和らげることが大切です。
シンスプリント
脛(すね)の内側10センチ程度に痛みが生じる障害です。脛にある2本の骨(脛骨と腓骨)の間の骨膜に疲労がたまって痛みが生じ、両足に症状が出る場合も多いです。また、足のアーチ(土踏まず)が落ちている状態でスポーツや運動を続けることで、着地の衝撃などを吸収しきれずに脚に疲労がたまって痛みが生じることもあります。硬い地面で繰り返し走る・飛ぶなどの激しい運動を行うことや、早期に硬いスパイクを装着することなども、その誘因となります。足のアライメントを正しい位置に維持し、運動後はふくらはぎの筋肉をしっかりストレッチしましょう。
捻挫
足関節の捻挫は、スポーツでの代表的な怪我です。その原因は様々で、転倒や着地の失敗、空中で人とぶつかったり、着地時に他人の足の上に乗ったりと、自分自身で気をつけていても、意図しない状況で怪我が発生します。捻挫は骨折より軽症に見られがちですが、場合によっては完治に2カ月以上を要します。骨折した結果、骨は元の強さを取り戻すことができますが、捻挫のような靭帯や腱の怪我は、皮膚と同じように傷が残ることが多く、元の弾力性を失うことになります。リハビリテーションでは、慌てずしっかり回復させることや装具などの着用も考えましょう。
腰痛
近年、子供の怪我で増えているのが腰痛です。腰椎分離症や椎間板ヘルニア、すべり症など様々な要因が考えられます。これらの腰痛は単純な腰部の痛みだけではなく、脚の感覚麻痺などを伴うことが多く、パフォーマンスに影響し、何よりトレーニングに対するモチベーションを低下させます。以前は腹筋・背筋のバランスが注目されていましたが、最近は腹横筋などを鍛える体幹トレーニングやコアトレーニングが主流となっています。腰痛にはまだまだ解明されていない点も多く、筋力や腹圧を上げるだけでは完治できません。腰椎だけではなく、積み重なる脊椎一つ一つの可動域を十分に使えるような運動や股関節の可動域の向上、姿勢やバランスの保持が腰痛予防につながります。
判断を早まると危険!ジュニアアスリートの体
先天的に体の硬い小学生がサッカーや野球などの競技スポーツをすると、一時的に高いパフォーマンスを維持できることがよく見られます。本来子供の体は、柔軟性が高くて筋力が未発達の状態であり、走る・蹴る・跳ぶなどの競技スポーツで求められる運動技術を自分の体の中でうまくコントロールできないのが普通です。しかし体の硬い子は、可動域が狭いことで筋力が弱くても体をコントロールしやすい場合があります。やがて成長期を迎え、骨格や筋肉が大きくなってくると体の柔軟性は失われていきます。ますます体の可動域が狭くなってプレーの幅が狭まるだけでなく、筋力に頼って強引なプレーになり、転倒や衝突が多くなって怪我をするリスクが一段と高まります。
専門知識を持った指導者が評価しているのであれば、体の状態もきちんと見極めていると思いますが、実際にシナトレをやってみると、体の硬いジュニアアスリートのパフォーマンスが高く評価されていることが少なくありません。小学生時代に高く評価されていた体の硬いジュニアアスリートはストレッチが嫌い(苦手)ですから、中学生になっても可動域を広げる努力をせずにスポーツや運動を続けた結果、成長期に体が変わり始めて1年ほど経つと技術力やプレースタイルの多様性が伸び難くなってきます。小学生の時にスポーツが得意だった少年が、高校生になって度重なる怪我や技術の伸び悩みで苦労する姿をよく見かけます。一方で、小学生の頃は細くて小さくて弱くてあまり目立たなかった子が、コツコツとストレッチや筋トレを続けることで、柔軟性が高くてしなやかな筋力のある選手に成長し、自由自在に体を操り、急激に伸びていくこともあります。
体の硬い子供には正しいストレッチを、そして体の柔らかい子供には正しい筋力トレーニングをして欲しいと切に思います。将来、プロの選手やアスリートにならなくても、必ず自分の体を健康に保ち続ける大きな財産となるはずです。
子供の異変に気づいたとき
スポーツをやっている子供が痛みを訴えるなどの異変が見られる場合は、スポーツに詳しい整形外科医がいる医療機関への相談をお勧めします。シナトレでは、トップアスリートの体を治療する専門家と連携し、痛みや異変が起こってしまった根本的な原因を探り、トレーニングやストレッチと併せて、怪我をしにくい体の使い方をご提案しています。