股関節の可動域とインナーマッスルの
使い方でプレーが変わる

埼玉大学教育学部准教授 サッカー部監督
菊原伸郎先生

埼玉大学のサッカー部でシナトレを体験していただきましたが、いかがでしたか?
シナトレを体験する前から股関節周辺の使い方については着目していたし、ダンサーの動きや軸の保ち方にも興味を持っていたので、バレエのレッスンメソッドと聞いて、絶対に学ぶものがあると思っていましたよ。実際に選手たちが体験している姿を見て、やっぱり面白いと思った。今の選手たちに足りない基礎運動能力が何かをはっきりと感じることができました。最近、「体幹」という言葉がよく聞かれるようになって、鍛えている人が多いみたいだけど、ただ体幹周辺の筋トレをするだけでは、実際にプレーの中で使われているかどうかわからない。まず、股関節の可動域を広げて、周辺の筋肉を使える状態をつくらないと、せっかく鍛えた筋肉も発揮することができないと考えています。だから、シナトレの最初に正しいストレッチや柔軟をしっかりやっているのは良かったし、しかも自分の身体の特徴を感じて、自分に足りないものは何かを考えられるように身体と対話する感じがとても良いです。
レノファ山口フットボールクラブU-18
先生はスポーツ運動学の研究もされていますが、シナトレにはどんな効果があると思いますか?
人間の身体で一番大きな骨である骨盤は、股関節で上肢と下肢をつないでいて、運動をするときに動きの始点になっていると考えています。どんなスポーツも腰の動きや位置がとても重要で、例え蹴ったり投げたりするだけであっても、股関節周辺の動きからうまく力を末端に伝えることによって、大きなパワーを発揮できるようになっているんです。ダンサーの動きはまさにそうなっていて、無駄な力が入っていないように見えるのは、外側の大きな筋肉を使わずにインナーマッスルをうまくコントロールしながら動かしているから。つま先立ちやトウ・シューズを履いて不安定な状態の中でいろんな動きをするには、どうしたって正しい姿勢や重心の位置を保ったまま、体軸がぶれない身体の使い方を身に付けるしかないんですね。スポーツ科学の分野では、大きな筋肉を使って最大パワーを発揮することを研究してきたけれど、小さな筋肉を駆使して微調整しながら細かい身のこなしをするにはどうしたらいいのか、という局面にきていると思います。歴史の長いバレエのレッスンメソッドは、そういう部分を研究して受け継がれてきたものだろうから、必ずスポーツにも効果があると確信しています。
埼玉大学サッカー部
なかなか効果が出ないと、継続するのは大変ではないですか?
身体は誰かと交換できないから、自分の身体と一生付き合いながら、自分で身体を作り上げて、パフォーマンスを上げていかなくてはならない。そういうことを分かってスポーツをやるのでなければ、アスリートとは言えないのでは? 実際にやってみて、継続してやれば必ず身体を変えることができると感じたから、学生たちが自分で感じて自らやるようになれば一番いいですよね。本来は、ジュニアの頃からストレッチやコーディネーションをやっているべきであって、「身体のセルフメンテナンス」というと難しいけど、運動前は身体を温めるとか、練習後はしっかりストレッチをするとか、いろんなスポーツや遊びで身体を動かすとか、そういう基本的なことを普段の生活の習慣にしておくだけで、骨や筋肉が成長してから苦労することも少ないはず。シナトレは、正しいストレッチやコーディネーションのプログラムが音楽とセットになっているから、覚えてしまえば子どもでも一人でできる。ジュニア期のトレーニングとしてもとても良いと思うので、ぜひ小学生や中学生にも取り入れてもらいたいと思っています。
シナジリティトレーニング